えっ、クリスティーネいないの?~イングリッシュ・ナショナル・バレエ『ノーラ』(配信)

 イングリッシュ・ナショナル・バレエの『ノーラ』を配信で見た。1幕物の短いバレエで、先程のリリック・ハマースミスのものに続いてイプセン『人形の家』の翻案である。2019年にサドラーズ・ウェルズ劇場で撮影されたもので、音楽はフィリップ・グラスの「チロル協奏曲」を使っている。

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 赤紫っぽいドレスのノーラ(クリスタル・コスタ)が自立して夫の家を出て行くまでを描いた作品である。「声」という役どころであまり目立たない衣装を着た5人のダンサーが出てきてノーラの周りで踊るのだが、一方でトルヴァル(ジェフリー・シリオ)とクロクスタ(ジョノ・ソウザ)は出てくるのにクリスティーネが出てこない。クリスティーネがいなくなると、けっこうノーラが男たちにふりまわされている様子が多くなりがちで女性同士の連帯の要素がなくなるので、やや平板な印象を受ける。寒々しい「チロル協奏曲」とダンスはよく合っているし、とくにノーラとトルヴァルはなかなか踊りも感情表現も力があると思ったのだが、一貫性はある演目なんだろうけれども話としてはちょっと物足りないなと思った。