性別変更の悪い例~サザーク劇場『十二夜』(配信)

 サザーク劇場『十二夜』を配信で見た。アンナ・ガーヴァン演出で、2019年の上演らしい。

southwarkplayhouse.co.uk

 小さな四角い舞台を四角く囲むように客席を設置しており、小道具はソファ程度で少ない。キャストも6人しかおらず、いろんな役を取っ替え引っ替えやっている。生演奏があり、なんとテルミンが使われている。

 子供向けの上演で、歌やダンスもたくさんあり、客いじりもある楽しいプロダクションなのだが、性別変更が全然うまくいってない。シェイクスピア劇で登場人物の性別を変更してもわりとうまくいくことが多いのだが、このプロダクションは驚くほどうまくいっていない。問題は公爵オーシーノをレズビアンの女性オーシーニア(サファイア・ジョイ)にしたことだ。こうすると、最初のところでなんで女性であるヴァイオラ(ベッキー・バリー)が侍女ではなくわざわざ男性に変装してお小姓として出仕しようとしたのかよくわからなくなる(原作では男性の公爵に仕える時はお小姓だと雇ってもらいやすいからという理屈がある)。何か理由付けできそうにも思うのだが、そういうことはこのプロダクションではやっていない。このせいで話がなんだか要らないことでみんな大騒ぎしているみたいな感じになっており、さらにオーシーニアが、どうもヘテロセクシュアルらしいオリヴィアの心を女の自分に向けて欲しいと口説くのにわざわざイケメン男性を差し向けるという、あまり恋の戦略としてはうまくなさそうなことをしている判断力がない人に見える(カッコイイ女としての自分の魅力をアピールしなきゃならないところでイケメン優男を差し向けてはダメだろう…まあオーシーノはもともと恋煩いで判断力を失っている困ったキャラなのでそれでもいいのだが)。マルヴォーリオ(ルーク・ウィルソン)とかは良かったので、このへんやたらに話が複雑になってしまったのは残念だ。ナショナル・シアターの『十二夜』は性別変更をうまくやっていたので、それに比べるとこちらのプロダクションはいくらなんでも無理があるだろうと思う。

 また、撮り方にけっこう問題がある。とくにセリフか歌か、またどの位置でセリフを言うかによって音量がすごく変わり、聞こえづらいところとやたら音が大きいところのむらが激しい。Wastedもそうだったのだが、あんまり撮影し慣れてない感じの映像だ。