映画の夢とほろ苦い終わり~『ようこそ、革命シネマへ』(ネタバレあり)

 『ようこそ、革命シネマへ』を見てきた。独裁政治と政情不安、法的規制で瀕死であるスーダンの映画文化を救うべく、もともと映画産業で働いていた4人の男たちが立ち上がって映画館を再開させようとする様子を描いたドキュメンタリーである。

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 いきなりおじいちゃまたちが『サンセット大通り』の有名なラストシーンを真似するところから始まるのだが、ごっこ遊びにしてはずいぶん上手な…と思ったら、これをやっている人たちはプロでした、という紹介がある。主要登場人物であるイブラヒム、スレイマン、エルタイブ、マナルはいずれも留学して映画を学ぶなど専門的な訓練を受けた人たちで、スーダンに軍事政権ができるまでは映画製作で活躍していたのだが、その後は地元で映画が作れなくなり、逮捕や亡命などの苦労を経験した。4人で古い映画館である革命シネマを再建しようとするのだが、ボロボロの施設の修理だけで大変で、近所のモスクの音が入ってくるのでおちおち上映もできないし、さらに上映を許可したがらない政府の官僚制が立ちはだかる。

 4人のおじいちゃまたちはさすがにプロらしく映画の知識が豊富で、みんなで映画館を再建しようとする努力の様子が活写され、魅力的なブロマンスになっている。この監督たちが作った映画も紹介されているのだが、全然知らない映画ばかりで興味を引かれた。新しいデジタル機材などを使って新作も撮っているそうで、その様子も紹介されている。そういうわけで新技術にも適応して映画のへの情熱がみなぎっている4人なのだが、カフカ的な官僚制と宗教的な横やりのせいで全く上映許可が下りず、結局この作品はおおっぴらに告知して大規模に映画館で行う映画上映会が正式に開催できないまま終わる。スカっとしないほろ苦い結末だが、こういう現実を変えるために努力している4人には尊敬の念を抱かざるを得ないというような終わり方だと思った。