イタリア風の明るい美術が特徴~グラインドボーン『コジ・ファン・トゥッテ』(配信)

 グラインドボーンの配信で『コジ・ファン・トゥッテ』(配信)を見た。2006年のニコラス・ハイトナー演出、イヴァン・フィッシャー指揮のプロダクションである。

www.glyndebourne.com

 イタリア風のシンプルだが明るい光を強調した美術が特徴だ。フィオルディリージ(ミア・パーション)とドラベッラ(アンケ・フォンドゥンク)が話す場面や結婚式の場面などはとくに地中海の戸外の爽やかな空気が感じられる絵のようなセットがよく効いている。音楽も大変しっかりしており、女性陣の揺れる心を表現した歌はどれもよかった。

 

 ただ、わりと真面目かつ手堅い演出で、完全に個人的な趣味の問題なのだが、私の好みからするともう少し笑えるほうがいいのではという気がした。このオペラはなかなかメチャクチャな話で諷刺劇だと思うので、けっこう皮肉と笑いを強調して演出したほうがいいと思うのだが、なんかニコラス・ハイトナーらしいストレートな上演で、見た目と音楽は綺麗なのだがもっとアホっぽく面白おかしい場面を作ったほうがよいのでは…という気がした。全然笑えないというわけではなく、可笑しいところもあるのだが、前に見たメトの演出のほうがもっと笑えたのであちらのほうが好きである。