手堅すぎるような…シビウ国際演劇祭配信、中国国家大劇院『夏の夜の夢』(配信)

 シビウ国際演劇祭の配信で中国国家大劇院『夏の夜の夢』を見た。クリス・ホワイト演出で、2016年に上演されたものの映像である。

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 なんかものすごくいろいろ先行上演を研究してるフシのある美術で、「どっかで見たな…」的要素が多い。たぶんピーター・ブルックジュリー・テイモアなんかをヒントにしていると思われる。三日月みたいに左側前方から後ろ斜め上にせり上がった台がうまく使われているのだが、たくさん棒を立てて木に見立てるというのは『夏の夜の夢』ではけっこうありふれているというか、たぶんここ数年とてもよく見かける感じの演出だ。衣装はかなり現代風で、とくに職人たちは近所の人たちみたいな親しみやすい格好である。特徴としてはパックが2人だというのがあるのだが、こういう演出も私は見たことあるので、たぶん何かを参考にしてるのじゃないかと思う。

 プロダクションのほうも、他の上演をいろいろ参考にして生かしていると思われ、笑いのツボをおさえた演出なのだがやや手堅すぎてあまり新しさはないという印象を受けた。ただ、劇中劇の場面は大変おかしく、職人たちも芸達者ですごく笑わせてくれる。職人劇団メンバーは大半が女性で、とくにクィンスは近所の世話焼きが好きなおねえちゃんみたいな感じだ。ところが美女シスビーを演じるフルートはけっこう背が高い男性で、オッパイに詰め物をしすぎて大変バランスが悪くなっており、明らかに衣装選びに失敗したふうである(クィンス、シスビーのオッパイと化粧をちゃんと指導しろよ…と思った)。スナッグ演じる塀が体を張って必死にピラマスとシスビーを妨害するところはとても可笑しい。ボトムが死ぬところでは剣のかわりに用意した棒が長すぎて月に手伝ってもらう羽目になり、さらにシスビーが同じ剣で自殺する時にも大変な手間がかかる。このあたりは本当に滑稽で笑えた。