非常に正統派の上演~グローブ座『夏の夜の夢』(配信)

 グローブ座の『夏の夜の夢』を配信で見た。2013年の上演で、ドミニク・ドロムグール演出のものである。

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 近世風の非常に正統派な感じの演出で、奇をてらったところもほとんどなく、手堅く笑わせるものだ。珍しい工夫としては冒頭にシーシアス(ジョン・ライト)とアマゾンの女王ヒポリタ(ミシェル・テリー)が戦い、アマゾンが敗北するという原作にないプロローグ的な場面がある。このため、冒頭では敗北の記憶が生々しく、ヒポリタがかなり苦々しい表情なのだが、心にかかっていたハーミアたちの問題が解決したせいでヒポリタも最後には多少リラックスしており、シーシアスも軟化して2人の関係が改善されて終わる。シーシアスとオベロン、ヒポリタとティターニアが1人2役なのはピーター・ブルック以降よくあるキャスティングである。オベロンはモッコリ股袋をつけてしょっちゅう怒っている男男しい妖精の王なのだが、一方でオベロンに仕えるパック(マシュー・テニスン)は中性的で子供のような若者で、オベロンがパックを持ち上げたり、キスしたりするような場面はホモエロティックな要素がある。

 また、ちょっと珍しい要素としてはボトム(ピアース・クィグリー)がものすごく棒読みだというのがあげられる。ボトムは大げさで感情豊かに作ることも多いと思うのだが、このボトムは皮肉屋でけっこうデッドパンな感じで、同じクィグリーがグローブ座で演じた『ウィンザーの陽気な女房たち』のフォルスタッフにかなり雰囲気が似ている。このボトムが演じるピラマスはとにかく棒読みでまったく台詞に感情がない大根役者で、これは劇中劇の演出としては珍しいと思う。