前評判ほど悪くないじゃないかと思ったら…『エジソンズ・ゲーム』

 『エジソンズ・ゲーム』を見てきた。トマス・エジソン(ベネディクト・カンバーバッチ)と、ジョージ・ウェスティングハウス(マイケル・シャノン)及びニコラ・テスラ(ニコラス・ホルト)が直流を使うか交流を使うかで電力シェアをめぐって争った電気戦争を描いたものである。お蔵入りになりかけた大変いわくつきの作品…というか、ワインスティーン社が作ったのだが、会社が破産したせいで公開が延期されていたものである。 

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 全体としてはちょっと詰め込みすぎで、またそのわりには前半テスラがあまり出てこなくてイマイチバランスが良くないような気はするのだが、中盤くらいから比較的テンポが改善してわりと良くなる。才能とヴィジョンは有り余っているのだが人格は欠点だらけで、汚い手段でウェスティングハウスを妨害するエディソンを演じるカンバーバッチと、すごく頑張っているのだがマスコミ対策では後手後手に回ってしまうウェスティングハウスを演じるシャノンの演技合戦は面白いし、エディソンを慕う若い助手のインサルを演じるトム・ホランドや、いかにも「変な天才」風のテスラを楽しそうに演じるホルト、ウェスティングハウスの肝の据わった妻マーガリートを演じるキャサリン・ウォーターストンなど、脇を固める役者陣の芝居も堂々たるものだ。

 前評判ではRotten Tomatoesで30%とかだったので、そりゃあすごくいいとは言えないかもしれないがなんでそんなにひどい評価なんだ…と思ったら、日本公開はワインスティーンの影響を排して直したディレクターズ・カット版で、そちらのほうがはるかに評価がマシらしい。ワインスティーンが制作中に編集にうるさく口を突っ込んでいたそうで、どうもそのせいで最初の版がかえって低品質になったようだ。ワインスティーンのハラスメント行為は労働環境のみならず作品の質に直接悪影響を与えていたのか…とげんなりした。