人種・性別を変えるキャスティングが効果的~ブリストル・オールド・ヴィク『ワイズ・チルドレン』(配信)

 ブリストル・オールド・ヴィクの配信で『ワイズ・チルドレン』を見た。2018-2019に上演され、アンジェラ・カーターの小説をエマ・ライスが舞台化したものである。

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 物語の主人公は双子のノーラとドーラで、話はドーラの回想の枠に入っている。ノーラとドーラのチャンス姉妹は役者のメルキオール・ハザードの庶子なのだが、メルキオールは子供達を認知せず、かわりにメルキオールの双子のきょうだいであるペレグリンが父代わりになって2人を養育する。ノーラとドーラはやがてショーガールとしてハザードの一座に加わり…

 

 美術プランはかなり華やかなものだ。右上にキャバレー風の電気のサインで大きく芝居のタイトルが出ており、真ん中には輪切りにして中が見えるトレイラーのような小屋が置かれていて、これは裏返して家の外見としても内装としても使うことができる。鏡台とか椅子とかいろいろなものが置かれており、わちゃわちゃした見た目の舞台だ。ここで皆が歌ったり踊ったり、全体的に非常に祝祭的な雰囲気で話が進む。

 原作小説のカーニヴァル的な雰囲気をよくとどめた芝居で、ブラックユーモアもあり、とても楽しい作品だ。カットはかなりあり、原作のシェイクスピアネタが減らされているところはちょっと寂しいのだが、まあ長くなりすぎるのでしょうがないのだろうと思う。カット後でもシェイクスピアネタはけっこうまだたくさんある。

 性別や人種をわざと変化させるキャスティングで、これがかなりよく効いている。年長のノーラは白人の女優・振付担当のエッタ・マーフィット、ドーラは白人の男優ギャレス・スヌークが演じているのだが、若いショーガール時代のノーラは黒人男優のオマリ・ダグラス、ドーラはマルチレイシャルな外見の女優メリッサ・ジェイムズが演じている。ショーガール時代の2人が非白人の若い役者だというのはとても効果的で、というのもフラッパーヘアスタイルのこの2人が舞台で踊っているところはまるでフラッパーとしてはレジェンド格と言えるであろうジョセフィン・ベイカーみたいで、ジャズエイジを思い起こさせる。とくにダグラスはものすごく妖艶でやたらもてまくりのノラをとても楽しそうに演じている。