よくできた映画だとは思うが、趣味でなかった~『グッド・ワイフ』(試写、ネタバレあり)

 試写でアレハンドラ・マルケス・アベヤ監督『グッド・ワイフ』を見てきた。

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 舞台は1982年、経済危機直前の時期のメキシコシティである。ヒロインであるソフィア(イルセ・サラス)は富裕な夫フェルナンド(フラビオ・メディナ)と高級住宅街に住み、贅沢三昧で暮らしていた。ここぞとばかりに富を見せびらかすパーティを開いたり、新入りの妻アナ・パウラ(パウリーナ・ガイタン)を煩わしく思ったりしながら暮らしていたが、やがて経済危機が起こり、ソフィアとフェルナンドも窮地に陥るようになる。

 家のインテリアからファッションまで、ディテールにこだわりつつ、富裕層の退廃を描いた諷刺劇である。たぶん、こういう見た目が綺麗だが質感が冷たい諷刺ものが好きな人にとっては高評価なのだろうと思うのだが、個人的に私はこの手の、不愉快な富裕層の人々がたくさん出てくるもののあんまり笑うところがない諷刺劇というのは好きではない。女性にとっては良い結婚が全てであるという価値観や、上流階級の特権にあぐらをかくことに帯する辛辣な批判であるということはわかるのだが、全体的にヒロインに寄っては引くみたいな距離感を保ったままけっこう真面目なトーンで撮っていて、あんまり笑えるところがないのである。これならもっとブラックユーモアたっぷりの話にできそうだと思うのだが、クスっと笑える箇所はせいぜい数カ所くらいだ。