今は亡きゼフィレッリの演出の再演~メトロポリタンオペラ『ラ・ボエーム』(配信)

 メトロポリタンオペラの配信で『ラ・ボエーム』を見た。フランコ・ゼフィレッリのヒット演出によるもので、このプロダクションは人気があるのでゼフィレッリの死後も再演されているらしい。指揮はマルコ・アルミリアートによるもので、ゼフィレッリがまだご存命だった2018年2月24日の上演である。

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 全体的には幕ごとのメリハリを考え、特定の登場人物や幕に見せ場が偏らないようバランス良く調整した正攻法の演出だという印象を受けた。第1幕はミミ(ソニア・ヨンチェヴァ)とロドルフォ(マイケル・ファビアーノ)の細やかな感情を強調している。出会ったばかりの2人がテーブルに向かい合い、歌いながら距離を縮めていく様子がよくわかる。「私の名はミミ」を歌った後にミミが笑って、それにロドルフォが微笑みで答えるあたりは大変かわいらしい。

 第2幕はうってかわって大がかりで派手な演出だ。2階建てのセットでパリの賑わいが大規模に表現されており、大量の人が出てきてごった返している。それでもこの中で真っ赤なドレスを着たムゼッタが埋もれないようにしている。第3幕は第2幕の華やかさがウソみたいな雪のわびしい風景で、ミミとロドルフォの互いを愛しつつ別れる心情が切なく描かれる。第4幕はパリの風景が見えるテラスで、この場面の美術の雰囲気はバズ・ラーマンの『ムーラン・ルージュ』にわりと似ており、あの映画のスタッフはたぶんゼフィレッリ版の『ラ・ボエーム』を見ていたのか…と思った。