カラフルで若々しいプロダクション~グラインドボーン『薔薇の騎士』(配信)

 グラインドボーンの『薔薇の騎士』を配信で見た。ロビン・ティチアーティ指揮、リチャード・ジョーンズ演出で、2014年のプロダクションである。

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 とにかく全体にカラフルで若々しいのが特徴だ。1950年代っぽいオシャレで色鮮やかな室内が舞台で、とくにマルシャリン(ケイト・ロイヤル)のドレスはすごく可愛い。序盤はけっこうセクシーな演出で、最初のところはいきなりマルシャリンが裸でシャワーを浴びている場面から始まる。

 マルシャリンがかなり若々しく、成熟した大人の女性というよりは青春が終わったばかりでそろそろ大人らしく振る舞わないといけない時期になり、一抹の寂しさを感じている貴婦人という雰囲気だ。オクタヴィアン(タラ・エロート)はそれに輪をかけて幼く、朝食の場面では果物をオッパイに見立ててマルシャリンとふざけるなど、非常に子供っぽい。このオクタヴィアンが終盤、ゾフィ(テオドラ・ゲオルハイウ)との恋とマルシャリンとの別れのおかげで少し子供っぽさを脱し、まだ若いとはいえ人生を真面目に考えるようになっていく。オックス(ラース・ヴォルト)も比較的若くて、これまた血気盛んな少年時代の全能感をそのまんま保存してしまったみたいな荒っぽい男だ。

 全体的にユーモアのある作りで、小間使いマリアンデルに変奏したオクタヴィアンが素っ頓狂なしゃべり方でオックスに答えるところとかはとてもおかしい。ちなみにこのプロダクションはオクタヴィアン役のエロートの体型が(多くは男性の)批評家から攻撃され、容姿差別だとして大問題になったのだが、見たところ全然オクタヴィアンに違和感はない…というか、少年っぽい無垢でいたずらな雰囲気のオクタヴィアンで、歌も表情豊かで良かった。ただ正直、オクタヴィアンの衣装のほうは、マルシャリンの素敵なドレスに比べてどうにかならないのかなーと思うところはあった。序盤のガウンやマリアンデルに変装した時のいかにも小娘っぽい衣装はいいのだが、第2幕の衣装は可愛いお小姓が背伸びしてるみたいな感じになってしまっているし、第3幕の男の衣装はちょっと学生みたいだ。キリ・テ・カナワが、エロートはすごく良かったが衣装には問題があり、髪型は良くないしコートが似合ってないし、足のほうはすらっとしたジョッパーズかタイツを履くべきだと指摘していたが、たぶんこの指摘は全部正しいと思う(たしかにコートがあまりイケてない)。