競馬一家の明るい家族ドラマ~『ライド・ライク・ア・ガール』(少しネタバレあり)

 『ライド・ライク・ア・ガール』を見た。メルボルンカップで初めて女性騎手として優勝したミシェル・ペインの伝記ものである。

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 ミシェル(テリーサ・パーマー)は競馬一家であるペイン家の娘で、10人きょうだいの末っ子である。ミシェルも騎手として競馬に携わるようになるが、女性騎手は性差別のせいでなかなかよい機会が巡ってこない上、落馬で大けがもしてしまう。さまざまな苦労をしつつ、ミシェルはダウン症の兄スティーヴィ(本人が出演)などに支えられてメルボルンカップ出場を目指す。

 ミシェルが性差別と闘いながらメルボルンカップ出場を目指すのがメインの物語なのだが、一方で妻と上の娘を既に失い、向こう見ずな性格のミシェルが死ぬのを過剰に恐れている父親パディ(サム・ニール)との確執とか、スティーヴィとの絆など、家族関係についてもかなり時間を割いて描いている。最初はドキュメンタリーフッテージから始まり、さらにスティーヴィ役はご本人が演じているということでけっこうリアル指向なのだが、一方で全体的にユーモアをまじえて深刻になりすぎないようにしており、ベタっとしない陽性な家族ドラマになっている。カトリック系の学校に通うミシェルをしょっちゅう叱っていた修道女の先生たちが、ミシェルがメルボルンカップに出る時はたぶん修道院の決まりを破って全財産をミシェルの馬に賭けてしまうというようなギャグはお約束だが、とても可笑しい。