いろいろ面白いところはあるが、疑問点も~オールド・ヴィク『ジキルとハイド』(配信)

 オールド・ヴィクが配信している『ジキルとハイド』を見た。ドルー・マコニーによるダンス演目で、原作は言わずと知れたスティーヴンソンの古典である。2016年に上演されたものらしい。
www.oldvictheatre.com

 舞台はヴィクトリア朝ではなく、1950年くらいになっていて、主人公のジキル(ダニエル・コリンズ)は花屋である。ジキルは花の育成や開花を促進するための薬を開発しているのだが、あんまり実験がうまくいかない。ひょんなことから自分の血を開発に使い始めたあたりから話がおかしくなり、ハイド(ティム・ホッジズ)が誕生する。この2人の性格は踊り方の違いでかなりはっきり分けられている。

 50年代っぽいカラフルな花屋のデザインも良いし、コミカルな箇所もいろいろあり、たまにちょっと『ファイト・クラブ』っぽくなったりもする。全体的にいいところはたくさんある作品なのだが、いくつか疑問点はある。まずはこのへんのレビューで言われているように、暴力(とくに性的な暴力)をちょっとセクシーに描きすぎているきらいがあり、また50年代風にしようとしすぎたあまり、ステレオタイプな表現も見受けられるということだ。あと、ヴィジュアルの点で気になったのは照明の点滅の使用である。ハイドが出てくるところでは照明をフラッシュみたいに点滅させる技法が何度も使われており、最初はけっこう効果的だと持ったのだが、だんだんちょっと飽きてくるというか疲れるような印象を受けた。ただ、これは家のモニタで見ているからであって、劇場で見るとそこまで鼻につかないのかもしれないとは思う。