演出がかなり苦手~オランダ国立オペラ『ムツェンスク郡のマクベス夫人』(配信)

 オランダ国立オペラの『ムツェンスク郡のマクベス夫人』を配信で見た。2006年の公演で、マルティン・クシェイ演出である。

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 実はこの演目はたぶん私が初めて日本で生で見たオペラ(演出は全く違った)…なのだが、その時の記憶に比べるとけっこうこの演出は私の好みではなく、あまり良いと思えなかった。

 現代風の檻みたいなセットに、ブロンドで不満たらたらのマリリン・モンローみたいな衣装の「ムツェンスク郡のマクベス夫人」ことカテリーナ(エヴァ=マリア・ウェストブロック)が出てくるところはいいし、暴力的でセクシーな演出にあわせたキレのある音楽も良いと思うのだが、全体的に性暴力の描き方がかなり問題あるように思う。アクシーニャ(キャロル・ウィルソン)が集団レイプされそうになるところの描写がえらく露骨で、残虐行為の主犯のセルゲイ(クリストファー・ヴェントリス)にカテリーナが惹かれるというのが正直よくわからないし、さらにセルゲイがカテリーナに迫るところは性的な強要だ。これはもともとの台本が孕んでいる問題だと思うのだが、演出でけっこう緩和できそうなのにそこをむしろ誇張していて、今見るとかなり居心地悪い演出だと思った。