ラピュタの村meetsゲイカップルの結婚式~『天空の結婚式』(ネタバレ注意)

 イタリア映画『天空の結婚式』を試写で見てきた。変わったタイトルだが、これは『天空の城ラピュタ』のモデルじゃないかと噂されているイタリアの山の上に浮かぶ風光明媚な村、チヴィタ・ディ・バニョレージョを舞台に、ゲイカップルが結婚式をあげるという話である。

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 主人公のアントニオ(クリスティアーモ・カッカモ)はベルリンでボーイフレンドのパオロ(サルヴァトーレ・エスポジト)と暮らしており、このたびめでたく結婚することとなった。アントニオはパオロの他、ルームメイトであるベネデッタ(ディアーナ・デル・ブッファロ)とドナート(ディーノ・アッブレーシャ)を連れて故郷の村チヴィタ・ディ・バニョレージョに帰り、両親にカムアウトするが、父親である村長のロベルト(ディエゴ・アバタントゥオーノ)は難民受け入れなどわりとリベラルな政策を主張しているのに息子の結婚を受け入れられず、一方で母のアンナ(モニカ・グェリトーレ)は有名ウェディングプランナーを呼んで豪華な結婚式(イタリアでは同性婚が完全に合法化されていないのでシビルユニオンになるらしい)を計画する。

 このチヴィタ・ディ・バニョレージョは大変美しい村だが、かなり過疎化が進んでいる上、山の上にあるせいで地盤崩壊がひどくて住めない地域が出ているという問題を抱えている。村長のロベルトは難民受け入れで起死回生をはかっているわけだが、アンナのほうはテレビ番組を持っている有名ウェディングプランナーを呼んで息子たちの結婚式をすることで村に注目が集まることを願っているフシがあり、このへんの「ゲイの若者を迎え入れることで地域おこしを」みたいな発想がかなり日本映画『his』に似ている。全体的にいろいろ面白いところはあるがちょっと雑な感じのところがあり、地域おこし映画としては優秀だがアラもいっぱいあるな…という点で非常に『his』と共通点が多い。アンナの町おこし意識をもうちょっと明確かつ丁寧に描いてほしいところだし、また終盤がかなり急ぎ足で、ドナートのアイデンティティとか教会の火事のくだりとか、いろいろ飛ばし気味なのでもう20分くらいあったほうがいいのでは…と思った。たぶん日本もイタリアも家父長制が強くて高齢化もしているし、この手の映画が作られる似たような社会的土壌があるんじゃないかと思う。