パイプ椅子とゴミ~カクシンハン『ロミオとジュリエット』(配信)

 カクシンハン『ロミオとジュリエット』を配信で見た。3人のキャスト(柳本璃音、根本啓司、大山大輔)と三味線の生演奏(鶴澤寛也)だけの少ないメンバーで無観客で上演するものである。

 セットは積み上げたパイプ椅子で弧のように囲った舞台にゴミみたいな紙くずがたくさん散らばっているというものだ。新聞紙を使うゴミっぽいセットといい、60分という短い尺といい、若い2人に深みのある声で大人を演じる大山大輔を対置するやり方といい、全体的に去年のギャラリー・ルデコでやった『ロミオとジュリエット』を配信に最適化した形で演出し直し、カクシンハン・スタジオ版『ロミオとジュリエット』で目立っていたような若々しい感じを少し加味したようなプロダクションである。去年よりもさらに道具類を減らしてシンプルにし、カメラで撮影しやすいようにしていると思われる。ただ、キャストのせいで印象がわりと違うところがあり、とくに柳本璃音のジュリエットがかなりボーイッシュで、ジュリエットというよりはロザリンドとかヴァイオラみたいな颯爽とした若い女性である。最初は無邪気でちょっと子どもっぽかったジュリエットが、だんだん大人になっていくあたりの変化が強調されている。

 初めての試みとしては撮影は悪くないほうだが、音ズレがかなりあるのがあまりよくない。三味線の生演奏がかなりドラマティックに効いているので、この音ズレは残念である。音ズレさえ解消できれば、有料でアーカイヴ配信にしてもいいのではと思った。