オールメール、5人だけでやる『ハムレット』~『5 Guys Shakespeare』(配信)

 『5 Guys Shakespeare』を配信で見た。

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 若い男優5人でとっかえひっかえいろんな役を演じながら『ハムレット』をやるというものである。この発想じたいは大変よろしいというか、少人数でオールメールで、みたいなのはアートハウス系のプロダクションの定番でもあり、この路線で手堅くシンプルにまとめていれば良かったのでは…と思うのだが、若手イケメン俳優5人でやるということで、半端にアートハウス、半端にイケメン舞台みたいな感じになっているのが煮え切らない感じであまりよくない。セットじたいは、途中から折れている柱が後ろにある一方、稽古場に衣装をつるすためのトルソやらハンガー立てやらが散らばっているみたいな感じでわりとアートハウス寄りだと思うのだが、たぶんこういう舞台装置なら地味な衣類でもっとそぎ落としてシンプルにやったほうがいいと思う。

 とりあえずイケメン舞台というわけでミュージカル仕立てなのだが、入ってくる歌があんまり効果的とは言えない。正直、歌についてはけっこう不安定であんまり上手くはないと思ったので、オフィーリア狂乱の場だけとかにしてあとはフツーにストレートプレイをやればよかったのでは…という気がする。また、シンプルな少人数の舞台にしては、衣装やメイクがちょっと派手寄りすぎるのもあんまり良くない。とくにハムレットはあんなに寝不足顔みたいなメイクにする必要はないと思う。

 また、元の話を2時間弱にカットしているのだが、その編集方針がやたらセンチメンタルなロマンスもの寄りで、オフィーリアとハムレットの恋路に焦点をあて、ポローニアス一家がみんなで恋愛沙汰にかかわる不必要にドラマチックな脚色がしてある。さらにレアティーズとハムレットの最後の試合は決闘だということになっており、ここもレアティーズとハムレットの感情のこじれが焦点化されていて、クローディアスが操る宮廷の陰険な陰謀という要素がやや薄められている。このため、政治劇らしさがあんまりなって単純なメロドラマのように見えてしまう。

 あと、これは技術的な問題だと思うのだが、台詞が少し小さい音になるところがあるかと思ったら音楽のところではずいぶん音量が大きくなるなど、やや音量が不安定だ。音声はもう少し調整が必用な気がする。マウスシールドをつけてやっているのだが、ひょっとするとそれも音声の調整には関係してくるのかもしれない。