演技はいいし、緊張感のある作品だが…『レディ・マクベス』

 『レディ・マクベス』を見た。オペラにもなっている『ムツェンスク郡のマクベス夫人』を原作としているが、舞台はイギリスだし、終わり方などはかなり変わっている。19世紀にイングランドの北のほうの田舎で愛していない相手と結婚させられたキャサリン(フローレンス・ピュー)をヒロインとするエロティックスリラーである。

 抑圧的な環境にありながらも強烈な意志で自分が好きなように人生をコントロールしようとするヒロインを演じたピューの演技は大変良いし、寒々しいイングランドの風景を生かした撮り方で全体的に緊張感のある作品だが、大変に後味の悪い映画である。そもそも私は『ムツェンスク郡のマクベス夫人』があまり好きではない…と思うのだが、一番引っかかるのはヒロインが召使いの女性に対する性暴力をきっかけに不倫にハマっていくということで、ここは社会の性差別と階級差別如実に示す展開だと思う。この映画でもその展開はそのままで、キャサリンがひたすら非白人のメイドであるアナ(ナオミ・アッキー)を搾取する。この映画ではそういうところが非常に後味の悪いものとして描かれているので肯定されているわけではないのだが、私はこういう描き方は全く好みではないし、あまり面白いと思わない。