ちょっとあり得ないと思った~『ピーター&ザ・スターキャッチャー』(ネタバレあり)

 新国立劇場で『ピーター&ザ・スターキャッチャー』を見てきた。『ピーター・パン』の前日譚である。

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 孤児である少年(入野自由、後でピーター・パンと名乗るようになる)とアスター卿の娘であるモリー(豊原江里佳)の航海と冒険を描いた作品…なのだが、私は全く面白いと思えなかった。私がそもそも『ピーター・パン』があまり好きじゃないというのもあると思うのだが、女性描写がけっこうひどい。好奇心も自立心も旺盛だったモリーがいざとなるとピーターに助けてもらうあたり、典型的すぎてうんざりする。さらにこの前日譚が終わった後にモリーがありがちなミドルクラスの妻であるダーリング夫人になるとかいう落とし方があり得ないと思うし、ちょっとばかりピーターとの間に幼い恋の芽生えみたいなものを経験したモリーが自分の娘も、その子供もピーター・パンと出会って欲しいとか言うのは全く不気味…というかむしろホラーだろと思ってしまった。こういう、おためごかしみたいに紅一点のヒロインを出しておいて、型どおりな「自立した女性」っぽい主張をさせた後に少年にヒーローの座を奪わせる、みたいな展開は正直、悪趣味だと思う。

 あと、原作に存在する帝国主義的なところがなんとなくごまかされている…というか、先住民がステレオタイプのイタリア系の料理人率いる謎の外国人集団みたいになっている、ここについてもけっこうたちが悪い描写になっているように思った。女性描写の点でも先住民描写の点でも引っかかるところがたくさんあり、全然楽しめなかった。