藤原竜也が床を這いずる芝居で靴を履いて何の感染対策になるの?~『てにあまる』(ネタバレあり)

 東京芸術劇場で『てにあまる』を見てきた。松井周による台本で、柄本明藤原竜也の主演作である。柄本明が演出もつとめている。

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 父子関係にITやら狂気やら、いろいろな話題をからめたサイコロジカルホラーっぽい作品で、和風マーティン・マクドナーみたいな戯曲である。戯曲じたいの雰囲気はいいし、とぼけた柄本明と相変わらずいっぱいいっぱいな感じの藤原竜也でスリリングなお芝居なのだが、問題は終盤、日本の家の中の場面なのにずっと登場人物が靴を履いていることである。序盤のアパートでは、汚い畳の部屋にうっかり靴のまま入ってしまったユウキ(藤原竜也)が父(柄本明)に靴を脱げと言われるところがあるのだが、ユウキのアパートではずーっと誰も靴を脱がない。この間の『外地の三人姉妹』もそうだったのだが、おそらく新型コロナウイルス対策で靴を履いているのではないかと思われる。まあ感染対策が要るというのはわかるのだが、正直なところ、私は日本の家屋で靴を履いて歩く現代劇はこれ以上一本も見たくない。新型コロナウイルスが流行っているからそうしているのだろうと現実を思い出してしまうし(この芝居では新型コロナウイルス流行が内容に多少取り入れられてはいるのだが)、なんといっても見た目が不自然すぎる。それにどうせ藤原竜也が床を這いずり回る芝居であるならば、靴を履いていようがいなかろうが、衛生的には同じだろうと思う。