だいぶ話が変わっている~『オリエント急行殺人事件』(ネタバレあり)

 シアターコクーンで『オリエント急行殺人事件』を見てきた。言わずと知れたアガサ・クリスティの有名作をケン・ラドウィッグが舞台化したもので、河原雅彦演出である。

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 列車のセットがかなり凝ったもので、上層にそれぞれの乗客の部屋につながるドアがある通路、下に食堂車がある。食堂車の左のバーカウンターは回転させて殺されるラチェットの部屋のセットに変えることができる。車外の場面では、食堂車の前方に壁を下ろして外から見たオリエント急行を表現している。上のほうには列車の雰囲気を示すための歯車やら車輪があり、このへんはリアリズムから離れたセットだ。

 わりと新しいアダプテーションらしいのだが、かなり登場人物が刈り込まれていて、内容も変わっているのに驚いた。おそらく上演時間を短くするためだと思うのだが、乗客数が減らされており、展開も違う。この展開の変更点についてはポアロ椎名桔平)の最後の決断に奥行きを与えるためのものだと思うのだが、全体からするとやや強引に思え、わざとらしいとはいえ一応、作品内でのつじつまはあっているという原作の一貫性が損なわれているような気もした。そこを除くと、全体としては豪華な列車のセットに演技もできる役者陣が集まって安心して見られる出来映えで、椎名ポアロも良かったし、大変楽しかった。