ちょっと余分なものを足しすぎでは?ブラックアイド劇場『ジキル博士とハイド氏の奇妙な事件』

 ブラックアイド劇場の有料配信で『ジキル博士とハイド氏の奇妙な事件』(The Strange Case Of Doctor Jekyll & Mr. Hyde)を見た。言わずと知れたロバート・ルイス・スティーヴンソンの古典をニック・レインが翻案し、演出もつとめている。こちらは2020年9月に部分的にお客が入れられる状態で上演したものの映像である。『ジキル博士とハイド氏』についてはオールド・ヴィクが先日、ダンス版を配信していた。

blackeyedtheatre.co.uk

 ブラックアイド劇場は同じくヴィクトリア朝の古典の舞台化である『ジェーン・エア』と『四つの署名』を既に配信している。ヴィクトリア朝らしい雰囲気を醸し出すのは既に慣れたものでとてもうまくやっているし、あと前二作ではイマイチだった台詞の音質などもかなり向上し、カメラワークも良くなっていると思う。小さいカンパニーだが、役者陣の演技も良い。

 ただ、正直、台本についてはけっこうイマイチである気がした。原作には出てこないエリノア(ペイジ・ラウンド)という女性キャラクターがヘイスティ(アシュリー・ショーン=クック)の妻として出てきてけっこう大きい役になっているのだが、エリノアがヘイスティとジキル(ブレイク・カビナ)の間で揺れ動く展開はちょっとセンチメンタルな感じで、マッドサイエンティストの暴走を描く話にこれは余分なのでは…という気がした。全体的にいろいろ原作にない余分の要素を足しているせいであまり台本が直線的に進まず、まとまりに欠ける感じで、これなら原作の地の文をたくさん使ってちょっと序盤が説明的ではあったものの展開としてはかなりまとまりのあった『四つの署名』のほうが良かったように思う。