好みの問題だが、衣装が…コーミッシュ・オーパー・ベルリン『サンドリヨン』(配信)

 コーミッシュ・オーパー・ベルリンの『サンドリヨン』を配信で見た。マスネのオペラである。ダミアーノ・ミキエレット演出、ヘンリク・ナサシ指揮によるもので、2016年に上演されたプロダクションの映像である。

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 かなり現代風な演出で、舞台はバレエ学校である。サンドリヨンことリュセッタ(ナージャ・ムチャンタフ)は足にケガをして踊れなくなり、寝込んでいるバレリーナだ。継母(アグネス・ツヴィールコ)はこのバレエ学校の先生であり、リュセッタの実父パンドルフ(ウェルナー・ファン・メヘレン)は学校で掃除など雑用をしている。王子(カロリナ・グモス)の花嫁を選ぶための舞踏会はバレエのオーディションみたいな感じになっている。

 音楽はとてもよく、とくに序盤のクライマックスであるリュセッタと王子の恋の歌は非常にロマンティックだ。舞踏会をオーディションみたいにするというのはなかなか面白いし、ヒロインがケガをして寝込んでしまったという自分ではどうしようもないトラブルのせいで踊れないというのも、リュセッタを不必要に受動的なキャラクターに見せないためには良い演出だと思う。ただ、これはかなり個人的な好みの問題ではあるのだが、バレエの群舞みたいな統一感を出そうとしているためにドレスを全体的に青っぽい色味で統一しており、この衣装はむしろ全体として一本調子な印象を与えるのではと思った。もともとは舞踏会で目立たなければならないということでひとりひとり個性的なドレスを着ているはずだと思うし、そういうところが目を楽しませる上で重要なはずだ。一番目立たなければならないリュセッタも青いドレスを着ているので、ここはもうちょっとバレエのオーディションという設定から離れて派手なものを着せたほうが良かったのではと思った。衣装などについては以前にロイヤルオペラが配信していた『サンドリヨン』のほうが上手だった気がする。