ピアチェンツァ市立劇場『アチ、ガラテアとポリフェモ』(配信)

 ピアチェンツァ市立劇場による『アチ、ガラテアとポリフェモ』の公演を配信で見た。2020年11月15日に上演されたものである。指揮とチェンバロがルカ・グリエルミ、演出はジャンマリア・アリベルタである。ヘンデルが1708年に作ったイタリア語のカンタータである。ヘンデルは同じ題材で1718年に英語のオペラも作っているのだが、音楽は異なるらしい。アチ(ラッファエーレ・ペー)と相思相愛であるガラテア(ジュゼッピーナ・ブリデッリ)に横恋慕したポリフェーモ(アンドレア・マストローニ)が嫉妬のあまりアチを殺害してしまう。最後は死んで水に同化したらしいアチとガラテアが象徴的に結婚するところで終わる。

www.youtube.com

 大きな二枚のスクリーンが後ろに、さらに舞台の前側に床に敷かれた別のスクリーンが一枚あり、そこに海とか雲とかいろいろな自然の情景が映る、シンプルだがかなり効果的なセットである。ポリフェーモが冒頭で恋心を歌うところでは後ろに炎のパルスみたいものが映ってギラつく嫉妬を際立たせている。アチがポリフェーモに襲われるところではスクリーンに映像で血が飛び散り、床で瀕死の心臓が動いているみたいな映像が映るちょっとグロテスクな演出もある。

 全体的に楽曲はとても良かった。結婚を申し込むアチとちょっとためらうガラテアの初々しいやりとりがなかなか可愛らしい。一方、ポリフェーモは一つ目(この演出では片眼の下に黒いメイクをしているが、とくにグロテスクに片眼を際立たせているとかいうわけではない)の不格好で嫉妬深い巨人という設定らしいのに、低音を自在に使って切々と恋心を歌いあげる音楽がかなり魅力的で、演技もいいし、こういう短く単純な恋愛劇の嫉妬をこじらせた悪役としては深みがある。