発想は素晴らしいが、少しスローかも~『ドリアン・グレイの肖像』(配信)

 『ドリアン・グレイの肖像』を配信で見た。ワイルドの原作を21世紀のまさに今、新型コロナが流行っている時代に移し替えた作品である。複数の劇場の共同で制作・配信された。台本はヘンリー・フィルー=ベネットによる翻案、演出はタマラ・ハーヴィである。

 ドリアン(フィン・ホワイトヘッド)はバジル(ラッセル・トーヴィ)に開発してもらったフィルタを用いて、オンラインで常に美しい完璧な姿を披露し、SNSなどで人気を集めるが、だんだんドリアンは精神の平衡を失い…というものである。肖像画のアイディアをオンラインフィルタに移し替えた発想は素晴らしく、またスティーヴン・フライとかジョアナ・ラムリーなど豪華キャストが出演していて演技も良い。とくにアルフレッド・イーノック(『ハリー・ポッター』シリーズにディーン役で出ていた子役)はちょっと退廃的でものすごくイケているリッチなヘンリーの役なのだが、ドリアンにいろいろちょっかいを出す様子は年齢以外は原作のヘンリーにピッタリで、ものすごくハマっていた。

 ただ、台本には少し展開がスローなところがあると思った。1時間半くらいしかないのだが、何しろ新型コロナで人が会って展開するアクションが少ないため、オンラインで会う様子ばかりだと、最初は良くても中盤くらいからちょっと見栄えがのっぺりしてくるところがある。十分面白いが、台本はもう少し刈り込んでもよいように思った。あと、正直なところ、見た目の質感はテレビドラマみたいで、まったくお芝居らしくはない。