楽しい作品だが、一箇所問題が~『ステージ・マザー』(ネタバレあり)

 『ステージ・マザー』を見てきた。

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 ヒロインであるメイベリンジャッキー・ウィーヴァー)は、テキサスの地方の町で教会の合唱団の指導者をしている。疎遠になっていたゲイの息子リッキーが突然亡くなったことを聞き、夫の反対を押し切ってサンフランシスコまでお葬式に行くが、そこで敵意も露わな亡き息子のパートナー、ネイサン(エイドリアン・グレニアー)から、リッキーがゲイバーのオーナーだったことを知らされる。ドラァグクイーンとして看板スターをつとめていたリッキーの死でバーの存続も危ぶまれるが、息子の死に対して後悔を感じているメイベリンはその遺産を守るべく、リップシンクだけではなく歌を入れたショーを導入することを提案し、これが当たってしまう。すっかりゲイバー経営が板につき、ボーイフレンドまでできたメイベリンだが、夫が突然やってきて帰郷を促し…

 全体としてはとても楽しい作品で、ウィーヴァーやグレニアのみならず、リッキーの親友だったシエナを演じるルーシー・リューや、ドラァグクイーンのチェリーを演じるマイア・テイラーなど、芸達者な役者陣が揃っている。メイベリンの自立を描くお話がちょっととんとん拍子に進みすぎるところはあるのだが、悪くはない。ただ一箇所とても気になったのが、チェリーがトイレでメイベリンの世間知らずな妹ビヴェット(レノア・ザン)に鉢合わせするところで、トランス女性であるチェリーにビヴェットがびっくりして悲鳴をあげて出てくるという、ちょっと今の基準では感じの悪すぎるジョークがある。その後は「まあこういうこともよくあるから」みたいな感じでトランス女性が女子トイレに行くのをダメなこととしては描いていないのだが、トイレのことでトランス女性が差別されている中でこういうジョークはどうかと思った。