複雑な世界観、単純な女性観~『JUNK HEAD』(ネタバレあり)

 『JUNK HEAD』を見てきた。堀貴秀監督がほとんど独力で7年もかけて作ったというストップモーションアニメ映画である。

www.youtube.com

 設定としては未来が舞台のSFである。地下世界には人間が作ったマリガンという人工生命が住んでいるのだが、マリガンは自我を持つようになって人間から独立して暮らすようになっている。一方、上の層に住んでいる人間は長命になったかわりに生殖能力を失うようになっており、人類再生のためにマリガン偵察のための調査員を差し向けることにする。主人公はマリガン調査に志願して地下世界に赴くのだが、そこでいろいろな地下世界の住民たちと出会い、冒険をすることになる。

 非常に作り込んだ世界観が特徴の作品である。ヴィジュアルは大変不気味で、推薦のコメントをしているギレルモ・デル・トロがいかにも好きそうな感じだ。話の運び方には変わったところが多く、「そこ、普通そういうふうにはつながないよな」と思うポイントがけっこうある。また、終わり方も三部作の一作目みたいな感じでかなり他にも大きな話がありそうな感じがする。独特の世界観といい、話の作り方といい、全体的になんかちょっとアウトサイダーアートっぽいというか(ヘンリー・ダーガーとか草間彌生を思い出した)、組織的な芸術教育や訓練をあんまり受けていない人が作ったような雰囲気があるのだが、監督は映画作りがだいたい独学らしい。多少ぎくしゃくしたところもある一方でたいへん個性的・独創的で、どれだけ時間がかかるかはわからないのだが、続編の構想が既に固まっているなら是非早めに作ってほしいと思う。

 ただ、世界観がとてもお複雑で作り込まれているわりに、出てくる女性キャラクターがかなり薄い。何人か女性と思われるマリガンが出てくるのだが、目立った女性キャラクターであるバルブ村の女性ボスはがさつ一辺倒である一方、マリガンの女の子であるニコはとおりいっぺんの健気なヒロインキャラで、ずいぶんと女性キャラが単純化されている。ニコが神様扱いされている主人公に対して綺麗になりたいとかいうようなことを言うところはイマドキちょっとどうかと思ったし、世界観に照らしてもよくわからなかった(このマリガン社会って、そもそも容姿の美醜でメリットやデメリットが発生するような場所なんですかね…?)。あと、途中で出てくる主人公からクノコを奪おうとするいかさま師のしゃべりが関西弁で翻訳されているのも、あまりにもステレオタイプだ。