ヴァージニア・ウルフ的韓国映画~『逃げた女』(試写、ネタバレ注意)

 ホン・サンスの新作『逃げた女』を試写で見てきた。公開が6月でかなり先なので、ネタバレ注意である。

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 基本的にガム(キム・ミニ)が夫の出張中に、やや疎遠になっていたらしい3人の女性の友人を訪ねるという話である。夫と離婚したヨンスン(ソ・ヨンファ)の家ではお肉をたくさん食べ、スヨン(ソン・ソンミ)の家ではスヨンに惚れているらしい詩人がしつこく訪問してくる現場に出会し、どうもガムのかつての恋人と結婚しているらしいウジン(キム・セビョク)とは過去のわだかまりについて話す。それぞれの友人の家において男性による不愉快な介入があり、それがだんだんひどくなっていく、というような展開がある。

 全編、あんまりはっきりしない感じの会話に彩られた不思議な作品である。なんだかヴァージニア・ウルフの作品みたいな印象を与える…というか、意識の流れみたいな女同士の会話を必ず男性がぶった切ることで男女間の権力構造をそれとなく示唆する、というような構造がちょっとウルフの短編「壁のしみ」を思わせる。ガムはいつも一緒にいたがる夫から久しぶりに解放されたらしいのだが、タイトル通り、何かから逃げる必要があって女の友達を訪ねているみたいなのに、それでも行く先々で男による介入があるのである。ヨンスンは離婚したばかりでヨンジ(イ・ユンミ)と住んでいて地域猫の世話をしており、ひょっとするとレズビアンなのかもしれないとかいうあたりもちょっとウルフっぽい。最後に家にすぐ帰らずにもう一度映画を見ようとするガムの態度には何らかの変化が感じられる。誰にでもすすめられる映画というわけではないのだが、私は少なくとも全く退屈しなかったし、これはすごくちゃんとした女性映画なのではないかと思う。