劇中劇『十二夜』あり~『青山オペレッタ THE STAGE~ノーヴァ・ステラ/新しい星~』(配信)

 『青山オペレッタ THE STAGE~ノーヴァ・ステラ/新しい星~』を配信で見た。青山にある由緒あるオールメール歌劇団が新人でシェイクスピアの『十二夜』を上演する、という設定の芝居である。前半が新人のオーディションとか、後半が『十二夜』のダイジェスト+レビューという構成になっている。ラジオ番組とかドラマCDを組み合わせたメディアミックスプロジェクトで、出演しているのは2.5次元若手俳優とか声優などだということだ。本来はお客さんを入れて上演する予定だったが、緊急事態宣言のせいで無観客配信のみになった。

stage-aoyamaoperetta.com

 お芝居にレビューがついているという構成や、組システムをとっているあたり、明らかに宝塚などの少女歌劇からヒントを得た設定である。新人が大半を占める新しい組ノーヴァが立ち上がることになり、100期生が奮闘するという内容である。前半のオーディションパートで、ベテランの加賀見(友常勇気)が、舞台慣れした自分が出るよりも未熟でも新人を育てて観客が成長についていってくれるようなやり方でカンパニーの人気を盛り上げたいと発言するところがあり、まあ日本でよくある、あんまりできあがっていない若手のアイドルを「推し」として育てるみたいなコンセプトを劇中で暴露している。そういうわけで、歌とかはかなり改善が必要というか、オペレッタを冠した名前の劇団にしてはちょっと…というところも多い。演技はそんなに悪くないところもあるのだが、2組に分かれて行うオーディションの優劣をわざわざ周りの人が台詞で説明するみたいなところは(この手のものではよくあるが)蛇足だと思った。

 劇中劇『十二夜』のほうはものすごくカットされており、ダイジェストみたいな感じである。マライアもフェステも出てこないし、マルヴォーリオいじめはけっこうトーンダウンされている。ちょっと深刻になりがちなマルヴォーリオいじめはともかく、正直なところ100年やってる名門歌劇団がフェステ(プロダクションによってはこの役がスターの役だということもあるくらい大きい役だ)の出てこない『十二夜』の翻案をやるとは思えないのだが、まあ若手俳優ばっかりだとフェステみたいな歌も歌えて笑わせることのできる、ちょっと年配の上手な道化役みたいなのは出しにくいのかもしれない。

 というわけで、いろいろ言いたいことはあるが、一番興味深いのは、こういうメディアミックスプロジェクトみたいなやつで、オールメールのカンパニーが第一弾としてやる芝居としてまず出てくるのがシェイクスピア劇だということである。アイドルがやるシェイクスピア劇みたいなのは最近わりと事例があり、日本におけるシェイクスピア受容のひとつとしてけっこう特徴あるものなのではないかと思う。こういうところにシェイクスピアが出てくるというのは、シェイクスピアがなんらかの権威を帯びているのと、あともともとオールメールだから男だけとか女だけでもやりやすいと思われているところがあるんだろうなと思う。