これならシェイクスピア劇をそのままやったほうが…『アウグストゥス-尊厳ある者-』&『Cool Beast!!』 

 宝塚の『アウグストゥス-尊厳ある者-』と『Cool Beast!!』を無観客有料配信で見た。

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 基本的にアウグストゥスこと若きオクタヴィウス(柚香光)のキャリア序盤を描いたものである。カエサル夏美よう)の独裁官就任からアントニウス(瀬戸かずや)とクレオパトラ(凪七瑠海)の自殺までを描いている。オクタヴィウスとポンペイウスの遺児ポンペイア(華優希)の恋愛と友情の中間みたいな絆がかなり前面に出てきている。

 全体的にあまり史実にものっとっておらず、シェイクスピア劇準拠というわけでもなく、若いオクタヴィウスがいろいろなトラブルに直面して苦労して少し大人になって終了、というような感じのお話である。1時間半強しかないのでわりと物足りない感じだし、そもそもオクタヴィウスを主人公にこの時代を描いて面白いのかな…というのもちょっと疑問に思った。というのも、カエサル暗殺やらアントニウスクレオパトラのロマンスやらに振り回されているだけになってしまうからである。

 アントニウスクレオパトラのロマンスはわりとシェイクスピア準拠なのだが、クレオパトラがあんまり宝塚っぽくない…というか、話し方や立ち居振る舞いがどっちかというとストレートプレイの歴史メロドラマか、あるいは現代のミュージカルから出てきたヒロインみたいな感じがする。けっこう現実の女性らしくリアルにセクシーなのでむしろちょっと浮いている気がした。むしろシェイクスピアをそのままやったほうがいいのではという気もする。オクタヴィウスとポンペイアは合っていると思ったので、トップの役者にあて書きだからこうせざるを得ないのかな…と思った。

 

 なお、レビューのほうも含めて歌はちょっとノリが良くないところがあるというか、無観客だからなのかちょっとこれまでに見た公演に比べて安定した盛り上げがないように思えるところもいくぶんあった。やっぱり観客がいないとやりにくくて調子が出ないのかもしれない。最後の退団者の挨拶などからしても、やはり無観客上演はパフォーマーのほうでもかなりやりにくそうだ。