ただのワークショップを見てるような…The Waves in Quarantine(配信)

 バークリー・レパートリー・シアターのThe Waves in Quarantineを見た。ヴァージニア・ウルフの『波』のミュージカル化作品について、6人の役者が登場する短編を6編つなげた連作である。演出家のリサ・ピーターソンと作曲家のデイヴィッド・バッカムは90年代に『波』をミュージカル化して高い評価を得ていたのだが、バッカムはその後自殺してしまったので、演目を練り直して大きな舞台で再演するというようなことができなかった。これを再び取り上げようというが最初の企画だったらしいのだが、新型コロナウイルス感染症のせいで対面のワークショップや再演ができず、その結果この映像作品ができたらしい。

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 『波』には6人の登場人物が出てきて、それにプラスして自分で話すことはないが不在の中心のようになっているパーシヴァルがいる。この作品も、6人のキャストの他に不在の中心であるバッカムがいるということでパラレルになっている。とくにキャストのひとりであるラウル・エスパルザがバッカムと親しかったらしいのだが、なかなか『波』のようにはいかない…というか、エスパルザはむしろバッカムの自殺についてまだつらい気持ちがあるみたいで、話しているうちにあんまりワークショップで掘り下げないほうがいいような感じになってしまってそんなにお話は発展しない(ワークショップでやたら個人的なことを掘り下げると精神的にキツくなりやすいし、さらに新型コロナでロックダウン中なのに自殺した親しい友人のことなど思い出したら憂鬱になってしまうだろうから、むしろこれ自体やらないほうがいいのでは…という気にもなった)。全体的には若干生煮え気味のワークショップを見ているだけみたいな感じになってしまい(役者陣がけっこうウルフの物語が難しいので苦労している)、あんまり盛り上がらない。第5編は全編にバッカムの音楽が使われており、これはとても良かった。バッカムがお亡くなりになったことにフォーカスするよりはもっと第5編みたいなものを作ったほうが良かったのではと思う。