ブラックユーモアたっぷり、オールブラックキャストの現代版『ハムレット』~ウィルマ劇場、Fat Ham (配信、ネタバレあり)

 ウィルマ劇場が配信しているFat Hamを見た。ジェイムズ・アイムズ作、モーガン・グリーン演出の作品で、オールブラックキャストの『ハムレット』現代版翻案である。

wilmatheater.org

 設定はデンマークの王室から現代アメリカ南部でバーベキュー店を営む一家に変わっている。刑務所に入っていたお父さん(リンジー・スマイリング)が服役中に殺され、寡婦になったテドラ(キンバリー・S・フェアバンクス)は夫の弟で説教師のレヴ(たぶん聖職者の敬称でReverendの略、スマイリングの二役)とすぐ再婚する。テドラの息子ジューシー(ブレナン・S・マローン)が結婚のお披露目の食事会を前にお父さんの死と再婚のことで悩んでいると、お父さんの亡霊がやってきて、レヴが手を回して刑務所にいる自分を殺させたのだと告げる。

 ジューシーの独白などはかなり『ハムレット』からとってきているのだが、会話の大部分はオンライン大学の学費やらポテトサラダやら、現代アメリカの家族が内輪で話しているような内容が大半である。それでもかなり『ハムレット』らしいのだが、全体としては笑えるところが多くてそこまで悲劇的にならないブラックコメディになっている。主人公でハムレットの役回りであるジューシーはゲイで、途中でかなりえぐいアウティングの描写があるのだが、最後はみんなが踊り狂って終わる。

 『ハムレット』の翻案としてはかなり良くできており、笑えるところも多い。全体としてはちょっとアートハウスなアメリカのご家族ブラックコメディみたいな感じになっていて、大変楽しめた。ほとんどが一家の庭を舞台にして野外で撮影しているのだが、撮影が上手で映画みたいに見える。