秋田犬のくだりは一切要らない~『ハチとパルマの物語』(試写、ネタバレ注意)

 日ロ合作の犬映画『ハチとパルマの物語』を試写で見た。

 1970年代にソ連であった実話をもとにした作品らしい。書類の不備で飼い主のポリスキーに空港に置き去りにされた犬パルマ(アルマという名前だったが勘違いされてパルマと呼ばれるようになった)が、空港で主人を待ち続けるようになる。父のラザレフ(ヴィクトル・ドブロヌラヴォフ)とうまくいっていない少年コーリャ(レオニド・バーソフ)はパルマを保護して親しくなるが、パルマを忠犬としてソ連のプロパタンダに使おうとする政府の意向がだんだん2人の友情に割って入るようになる。

 ソ連パルマとコーリャのくだりはわりと真っ当なご家族向け犬映画である。空港のデザインや雰囲気が70年代のソ連にしては新しすぎるとか、序盤でラザレフの女性上司であるジュリナがちょっとステレオタイプな感じだとか、作りが甘いところはいろいろあるのだが、パルマ役の犬(リリヤ)が芸達者なので犬だけ見ていれば犬好きは満足できる。終盤はご家族向けの映画にしてはソ連官僚主義が生々しく描かれていて、パルマとポリツキーの関係とコーリャとラザレフの関係がパラレルになってくるあたりなど、けっこうちゃんとしている。

 しかしながら序盤と最後に強引にくっついている秋田犬のくだりが一切、要らない…というかこのせいでなんかすごく変なご当地映画に見える。70年代にパルマとコーリャに秋田から来た日本人がハチ公の話をしてあげたというまったく本筋に関係ないエピソードのせいで、大人になったコーリャが日本に秋田犬を引き取りに来るというプロローグとエピローグみたいなものがゴリ押しで入れられている。最初の秋田犬イベントのあたりはなんかもうダサすぎてびっくりしたし(いくら秋田犬を飼ってるからってアリーナ・ザギトワを出す必要あるか?)、なぜかロシア語と日本語で通訳なしで話しているあたりも意味不明だし、最後のエピローグ的なくだりも頭痛がするような出来である。秋田犬関係の資金が出ているからこうなるのだろうが、単なるスポンサーのわがままにしか見えず、なんかいきなり日本推しになって意味がわからない。この秋田犬のくだりを全部とっぱらったらもう少しすっきりしたまともな映画になっただろうに…と思う。パルマはこれだけで映画になるようなキャラの立った犬なんだから、バランスからしてハチの話とかは入れるべきではない。