突然のゴダール風味~『5月の花嫁学校』(大きなネタバレあり)

 『5月の花嫁学校』を見てきた。

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 舞台は1967~68年、アルザス地方の花嫁学校である。校長のポーレット・ヴァン・デルベック(ジュリエット・ビノシュ)、ポーレットの夫であるロベール(フランソワ・ベルレアン)の妹で料理教師のジルベルト(ヨランド・モロー)、元レジスタンスの修道女であるマリ=テレーズ(ノエミ・ルヴォヴスキ)の3人は長年、この学校で少女たちに良妻賢母教育を施していた。ところがロベールが突然死し、学校がとんでもない放漫経営だったことがわかる。さらにポーレットが昔の恋人で戦争中に行方不明になっていたアンドレエドゥアール・ベール)と再会し…

  これまで少女たちに男性中心的な社会に従うよう厳しい教育を施していた女性の教員たちがロベール(単なる役立たずかと思っていたらお金を着服・浪費していた)の死の後に解放されていく様子と、1968年の五月革命を控えた社会で反抗心を募らせていく少女たちを重ねて描いていく映画である。ちょっと無理している雰囲気があるポーレットが花嫁学校の先生になった経緯は、ナチスドイツに占領されていたアルザスでポーレットが親を失い、お金に困っていたからで、ロベールと結婚する以外に選択肢がなかったことが示される。こういうふうに比較的丁寧にポーレットのことを描いているので、ポーレットが今まで花嫁学校で性差別的な教育をしてきたことを心から後悔するあたりも「いやいやお前のせいで今までいろいろな少女の人生がメチャクチャに…」と切り捨てにくくなっており、そのあたりは展開が丁寧である。ただ、ジルベルトがアンドレに恋するあたりの展開は要らないような気がする。

 最後は突然ミュージカルになり、ポーレットを先頭に女性陣が歌や踊りを披露しながら勇ましく性差別に反対するスローガンを叫び、革命のパリへと行進していく。ジャン=リュック・ゴダールの『女は女である』とか、アンナ・カリーナが出ている『アンナ』、あるいは『シェルブールの雨傘』あたりのフレンチミュージカルを意識したのかもしれない。政治的文脈がありつついきなり歌ったり踊ったりするのゴダールっぽいが、昔の恋人と出会って…とかいうのは『シェルブールの雨傘』などカトリーヌ・ドヌーヴが出ているような映画の雰囲気を狙ったのかもしれない。