ちょっと演出が…マンハイム国立劇場『イポリットとアリシー』(配信)

 マンハイム国立劇場『イポリットとアリシー』を配信で見た。ジャン=フィリップ・ラモーの1733年のオペラである。ベルンハルト・フォルク指揮、ロレンツォ・フィオローニ演出で2021年5月1日に上演されたものである。

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 原作はラシーヌの『フェードル』なのだが、かなり変更があり、テゼ(ニコラ・ディスキッチ)が冥界に行くくだりなどが付け加えられていて、テゼのほうがとても大きい役柄になっている。舞台はなんかゴミが散らかった楽屋みたいなセットで、人間は現代風の衣服を、神々はバロック風の衣服を着ている。客席にマスクをつけたバロック風の衣装の合唱団がいる。ジュピテル(パトリック・ジールク)がけっこう大事な役なのだが、ジールクは冥王プリュトンと二役である。

 全体的に大変けっこう話がわかりにくく、初心者向けではない演出で、たぶん『フェードル』を見たことがないとよくわからなかっただろうと思う(英語のレビューでも事前に物語を知らないとよくわからないだろうと言われていた)。最初の17分間は準備の映像で字幕もついていないし、話も始まらない。いろいろ新しいことをやりたいのはわかるのだが、もうちょっと話がわかるようにドラマチックにやったほうがいいのではないかと思うし、またダンスが全然ないのは大変つまらない。あと、プリュトンが顔に×マークのついたやたら乳首を強調したファッションの変なおじさんになっているのはちょっとどうかと思った。冥王なんだから、かちっとした服装で厳しそうな人にしたほうがいいのではないだろうか…冥王だから変なファッションというのは実に安易である。歌は良かったのだが、演出にはかなり疑問のあるプロダクションだった。