バーナード・ショーの思い込み~演劇企画CaL『ほんの駆引き -Village Wooing-』(配信)

 演劇企画CaLの『ほんの駆引き -Village Wooing-』を配信で見た。バーナード・ショーの短い芝居で、一組の男女が船上で出会い、やがて女性のほうが働いているイングランドの村の店で再会して結婚するまでを描くものである。ワーキングクラスの女性がミドルクラスの男性をいろいろ説得して結婚に導いていくという展開だ。こちらのプロダクションは生演奏のアイルランド音楽がつく演出である。

 全体的にセットなどは前の『旅人たちの春の夢 -The Tinker's Wedding-』よりずいぶん良くなっている。また配信映像のクオリティについては、野外で撮影したせいで音声がかなり悲惨だった『山の神様 -The Gods of the Mountain-』に比べると段違いである。演技も前に比べるとけっこうこなれている。新型コロナウイルスで大変だろうに、これだけちゃんとクオリティを上げてきているのには感心した。この題材でアイルランド音楽の生演奏が要るのかな…というのはちょっと思ったのだが、まあそれはアイルランド演劇をやる団体なのでしょうがないのかもしれない。

 小規模な作品だが、コンセプトは『人と超人』に似ている。バーナード・ショー特有の、「結婚というのは女性が男性をそそのかして起こる」というよくわからない(時としてミソジニー的にもなりうる)思い込みを追求したものである。このミョーな思い込みを気にしなければまあ風習喜劇としてふつうに笑って楽しく見られるのだが、こじんまりとまとまっているぶん、『人と超人』みたいな大規模で突き抜けた個性的な芝居に比べるとかなり物足りないとは言えると思う。