声優によるリーディング~『名作異聞 ロミオとジュリエット~ ティボルト その恋の犠牲者~』(配信)

 『名作異聞 ロミオとジュリエット~ ティボルト その恋の犠牲者~』を配信で見た。長瀬貴弘脚本、松崎史也演出で、声優によるリーディング公演である。東京芸術劇場で上演され、ニコニコの有料配信で見ることができる。

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 お話の内容は、『ロミオとジュリエット』の脇役で亡くなってしまうティボルト(浪川大輔)とパリス(梶原岳人)をメインに、この2人の友情を描くものである。お話のほうはだいぶ原作と違っており、人数の問題なのかジュリエットの父キャピュレットは出てこなくて、そのへんの役割は全部キャピュレット夫人(冨永みーな)がやることになっているし、ティボルトの設定も全然原作と違う。ティボルトがジュリエットを慕っているというのはよくある展開だと思うのだが、それがさらにティボルトを慕っていたパリスがその意向を受けてジュリエットに求婚するという、非常にイヤな感じの典型的ホモソーシャル展開に進む…のだが、このへんの女性をないがしろにする感じはティボルトとパリスの間の激しい感情のこじれが話の中心になっているせいでなあなあになってしまい、そんなに鋭くツッコンでいるわけではないと思う。

 リーディングではあるのだが、けっこうアクションはあるし、また衣装も凝っている。浪川ティボルトは『ロミオ+ジュリエット』でディカプリオのロミオを吹き替えているそうでさすがにこなれていて上手だが、ジュリエット(久保ユリカ)は正直、声が明るすぎて全く役にあっていないと思った(前から若い女優を使う上演では気になっているのだが、舞台でジュリエットをやるなら必要以上にキャピキャピしゃべらないほうがいいので、明るすぎる声の女優を使うのはミスキャストだと思う)。さらに言うと台本も不自然に女言葉を使っていてステレオタイプな可愛い女の子になっており、こういうホモソーシャルのイヤな感じもある作品でジュリエットがこれだとずいぶん弱いと思った。