雰囲気のある翻案~ロックミュージカル『ドリアン・グレイの肖像』(配信)

 ロックミュージカル『ドリアン・グレイの肖像』を配信で見た。リニー・リードマンと台本、ジョー・エヴァンズ作詞作曲によるもので、演出もリードマンがやっている。2020年に上演予定だったがロックダウンでできなくなり、映像で初演ということにしたらしい。

 グラムロック風味の雰囲気ある作品である。舞台は現代だが、こだわりのある(こじらせた)アート系の連中が主人公なので、インテリアや衣装にはヴィクトリアンテイストもある。おじいさんに廃嫡されたせいでふてくされている若者からロックスターになるドリアン(バート・ランバート)は本棚に囲まれたスタジオに住んでおり、本棚の一箇所が隠し扉になっているとかいういかにもなデザインである。本や音楽が好きなアンドロジェナスな若者であるドリアンを演じるランバートが上手で、かなり魅力的なドリアンだし、他の役者陣も歌はちょっと未熟な感じがするところもあるが演技は良い。グラムロックっぽいテイストで、たまにちょっと『ワイルド・パーティ』っぽい感じになるのも私としては嬉しいところだ。ただ、やはり舞台で初演する予定だったものを映像にしたせいか、たまに低予算のテレビ番組みたいな安っぽさがあるのはあんまりよくない(このレビューで指摘されているが、シビルが出ている劇場とかがずいぶん安っぽい)。どうせやるならもっとグラム全開でやりすぎなくらいゴージャスにしてもいいのではないかと思う。