面白いところはたくさんあるのだが、知識がなさすぎて…『カタカリ版リア王』(配信)

 配信で『カタカリ版リア王』を見た。インドの伝統的な舞台芸術であるカタカリによる『リア王』の上演である。カンパニーはインドの劇団ではなく、フランスのアネット・レデイ/ケリ劇団が作ったもので、2019年の上演だそうだ。

 演奏や歌を担当する人と舞踊を行う人が別で、見た目は歌舞伎や能、京劇などにも似ているのだが、舞踏家の体の動きにもひとつひとつ意味があるそうなのに全く音声の台詞がなく、どちらかというと人形のかわりに人間が動く文楽、あるいは活弁つきのサイレント映画みたいな感じがした。一応英語字幕がつくのだが、細かい動きを全部翻訳してくれているわけではないのではないかと思うので、たぶん理解できていないところがたくさんある。緑の仮面をつけていかにも王様らしい風格のリア王、可愛らしいコーデリア、面白可笑しい道化などのキャラクターはわかりやすいのだが、ゴネリルとリーガンが円錐みたいなとんがったでかいブラジャーのようなものをつけているのはビックリした。こういう衣装の細かいところにおそらくは伝統的なストックキャラクターなどを示唆する工夫があるのではと思うのだが、知識がなさすぎてよくわからないのがもどかしいところである。とくに佯狂のエドガーがトムになるところでは大変変わった黒っぽい装いをしていて、これもたぶんカタカリに通じている人であればもっと意味が理解できるのではないかと思う。