外来植物の恐ろしさを考える~『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』(ネタバレあり)

 シアタークリエで『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』を見てきた。ロジャー・コーマンの映画が原作で、それが舞台ミュージカルになり、さらにミュージカルも映画化されている。

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 主人公のシーモア(鈴木拡樹)はムシュニク(阿部裕)の花屋に勤めている心優しい青年で、同じ店で働くオードリー(妃海風)に恋しているが、オードリーにはサディストの歯科医オリン(石井一孝)という恋人がいてなかなか思いを打ち明けられていない。ムシュニクの花屋にあまりにも客が来ないため、シーモア日蝕の日に見つけてきた不思議な植物、オードリーII(声:デーモン小暮)を花屋の店先に飾ることにするが、そのおかげでたちいまち客足が増える。ところがオードリーIIは成長に人間血を必要とする食人植物だった。シーモアはオリンを殺してオードリーIIに食べさせることを考え始めるが…

 お話自体はいかにもB級ホラーっぽい感じで、またオードリーのキャラクターがやたらと可憐で健気でちょっと今の感覚だとビックリするくらい献身的である。ただ、周りの人は皆、オードリーがオリンと付き合っているのはおかしいと思っていてそれを口に出しており、オードリーはけっこうたぶんこの作品の中では異常な人物という位置づけではある。ムシュニクも完全にワルというわけではないが、わりと身勝手な上司だ。オリンは完全におかしい。そういう変な人たちに囲まれているうちに、優しい常識人だったシーモアがどんどん悪いことに手を染めていく様子をツボを押さえた展開で描いており、歌もわりと良いし、笑えるところもあり、楽しめる作品だ。オチは外来植物の恐ろしさを知らしめる非常に啓蒙的なもの…のように見えるのだが、まあ意図的ではないと思う。

 オードリーIIの声をデーモン小暮があてているのは適役である。鈴木拡樹は台詞回しや身のこなしは非常に可能性を感じるのだが、歌はかなり不安定で、この人はたぶんストレートプレイに出たほうがいいと思う。なお、途中で使われる3Dは正直、必要かなぁ…という気がした。ライヴの上演でわざわざ血が出るところとかを映像の3Dでやらなくても、もっとやり方があるのじゃないかと思う。

 あと、『ロック・ミー・ハムレット! 』の"Rock Me Sexy Jesus"はたぶん「リトル・ショップ・オブ・ホラーズ」のパクリというかパロディなのでは…と思った。ちょっと似すぎている。

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