視覚効果だけで一見の価値あり~劇団四季『アナと雪の女王』

 劇団四季アナと雪の女王』を見てきた。同名映画の舞台化で、マイケル・グランデージが演出したヴァージョンを日本に持ってきたものである。音楽は映画で使われているものにプラスして新曲がある。

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 お話は映画に準拠しているのだが、とにかく特殊効果がすごい。歌や踊りはしっかりしているし、視覚効果だけでとにかく一見の価値はあると思う。もともとのディズニー映画はアニメらしさを生かした雪や氷の質感とかが特徴なのだが、舞台ではそういうアニメっぽい表現ができないので、そこを全部舞台的な視覚効果でカバーしている。エルサ(三井莉穂)が手から出す魔力の冷気は主に照明(+紙吹雪)で表現されていて、それだけでもけっこう見た目が面白いのだが、中盤でエルサが「ありのままで」を歌いながら氷の城を作るところは、ちょっとエルサの後ろで幕が閉まってプロジェクションになったかと思ったら壮大な氷のセット(しかも上からいろんなキラキラした結晶が落ちてくるかなり繊細そうな美術)が表れ、エルサのドレスも歌の盛り上がりにあわせて氷の女王風のセクシーなものに舞台上で早変わりという、かなり高度なことをやっている。しかもエルサの表情がきちんとわかるようライトが当たっているのに後ろの幕に写ったプロジェクションがボケずに綺麗に見えるようになっていたり、とにかく照明やいろんなものを動かすタイミングがほとんど完璧である。終盤のアナ(町島智子)が凍り付いてしまうところの照明や動きなども大変よく考えられている。

 エルサ周り以外の視覚効果も面白く、アナとハンス(塚田拓也)が語り合うところの藤棚のような夏らしいセットも綺麗である。これはエルサのせいで冬が来て作られる氷の宮殿と対比されるような見かけのセットになっており、藤の花のかわりに氷が上から降りてくるようになった、というようなイメージの変化が感じ取れるようになっている(ただ、ダンスの途中でアナの靴が片方脱げてしまったのはビックリした)。また、オラフ(小林英恵)は後ろに人がいて動かす大きめのパペットになっているのだが、これもけっこう面白いし、スヴェンのパペットも大変よくできている。

 なお、ディズニーミュージカルにしてはわりと攻めた演出もある。サウナの場面では全裸の人々が枝で体を隠しながら踊り狂う場面がある。エルサの衣装はディズニーとしては限界のセクシーさではないかと思う。クリストフ(北村優)は映画よりもワイルドでセクシー系である。