秘密がたくさんある舞台~日生劇場『こうもり』

 日生劇場で『こうもり』を見てきた。川瀬賢太郎指揮、アンドレアス・ホモキ演出のものである。『こうもり』は既に一度、生の舞台で見たことがあるのだが、わりと風変わりな演出でやや咀嚼しにくかったところもあったので、今回はもう少しオーソドックスな演出でわかりやすかった。

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 舞台は基本的に19世紀のウィーンの富裕層の邸宅の部屋なのだが、閉じた部屋にいろいろクローゼットやらなんやらがあり、途中で登場人物がそこに隠れたりして、社交界にはいろいろ隠しておきたいことがあるんだな…というのを意識させるセットになっている。中央左拠りにソファがあり、これをうまく使って登場人物たちをここに座らせることでキャラクター同士が心理的に距離を縮めるのを示したり、ソファを倒すことで宴がちょっと荒っぽくなってきていることを表現したりしている。オルロフスキー(郷家暁子)の宴から終盤の刑務所の場面に移るところでは家具が全部倒れてシャンデリアまで落ちてきてセット全体が瓦礫みたいになっており、そこにパーティの出席者たちがごろ寝していて、とんでもない乱痴気騒ぎの後みたいに見える。オルロフスキーの宴の雰囲気はわりと色っぽく、なんかちょっと品のいい乱交パーティみたいに見えた。歌もこれに合わせてわりと親密感のある雰囲気にまとめていると思う。

 なお、刑務所職員のフロッシュ役で森公美子が出ており、刑務所の場面の冒頭でフロッシュひとり舞台みたいなのがある。ここは面白いことは面白いのだが、ちょっと長いと思ったし、あとオペラ歌手の体型ネタや目が見えないことに関係するネタをここでやる必要はあるのかなと思った。スターを見るのは楽しいが、一方で全体の雰囲気にあまりあっていないと思う。