やつれた女の子から堂々とした女性へ~Kバレエカンパニー『シンデレラ in Cinema』

 Kバレエカンパニーの『シンデレラ in Cinema』を見てきた。Kバレエカンパニーは映画館での上映を定期的にやっており、これは今年の10月の公演の映像である。

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 『シンデレラ』はオーソドックスな演出とマシュー・ボーン版で1度ずつ見たことあるのだが、正直オーソドックスな演出のはかなり苦手だった…というか、なんか衣装デザインとかが子どもっぽい感じでただただ華やかなだけで面白いと思わなかったのだが、こちらの演出はもう少し大人な感じで以前見たものよりだいぶ理解しやすかった。おとぎ話ではあるのだが衣類はけっこう私好みだったし、比較的シンデレラ(日髙世菜)の精神的な変身がわかる演出になっている。最初に出てくるシンデレラが、(わざとだと思うのだが)やたらと頬と大きな目ばかり目立つメイクでまるで過労でやつれているみたいで、意地悪な継母や姉たちに虐待されるたびに血色が悪くなっていくみたいな感じで実にかわいそうな女性だったのが、仙女や妖精たちが出てきてからはだんだん励まされて自信を取り戻し、堂々とした女性に変わっていく様子が演技と演出、ダンスでわかるようになっている。カメラワークも上手で表情がよくわかる。

 ただ、いくつかやはりちょっとなぁ…と思うところもある。とくに継母と姉たちが型にはまった感じなのは気になる。また、途中のハイパーみかんタイム(と私は呼んでいるのだが、たぶん珍しいオレンジが献上された場面なんだと思う)みたいなところでやたらステレオタイプにオリエンタルな衣装やダンスが使われているのは、あれは要るのかなぁ…と思った(バレエはこういうなんか民族的なステレオタイプのあるお楽しみダンスみたいなのがけっこうあるところが私はちょっと苦手で、もうちょっとステレオタイプが著しくない衣装にしてもいいのに…と思う)。それから概ねよかったカメラワークに一箇所だけ気になったところがあり、シンデレラが初めて宮殿に現れる場面はもうちょっと引きの画面を使うべきではと思った。