長さのわりにテキレジがちょっと…あうるすぽっと『マクベス』

 あうるすぽっとで『マクベス』を見てきた。劇団東演によるものである。演出家のワレリー・ベリャコーヴィッチが途中でお亡くなりになってしまい、O.レウシンが引き継いで完成させたそうだ。

www.owlspot.jp

 大きい扉のあるセットで、これを動かしていろいろな場面を作っている。一部のキャストはロシア語を使用しており、赤っぽい照明をたくさん使い、ダンスみたいにかなりダイナミックに動く演出もある。魔女役は全員男性で、半裸でかなりたくさん動き回る役柄である。

 全体的に動きのダイナミックさは凄いのだが、私はあんまり好みではなかった…というのも、2時間45分くらいあるのにけっこうテキレジが変で、台本よりも動き重視な感じが好きになれなかった。一番気になったのはマクベス夫人周りの編集である。マクベス夫人が手紙をもらって独白するところがカットされ、夫と話すところにくっつけられてしまっているので、マクベス夫人がひとりで考えるような場面が減らされている。さらにマクベス夫人の夢遊病のところもかなりカットされて医者や召使が出ず、マクベス夫人が狂乱するだけみたいな場面になっている。さらにマクベスの「明日」スピーチがちょっとずらされていて、マクベス夫人の死の直後ではなくなっている。全体的にこのプロダクションのマクベス夫人は知的かつ狡猾に考える悪役というよりは見せ物的な「狂女」である(わざわざスコットランドの貴族たちが、マクベス夫人は狂女だと噂するセリフまで付け加えられている)。

 それから細かいところだが、バンクォー殺害の後の場面の時間的なつじつまがおかしい。マクベスがバンクォーの亡霊が出た直後に今夜魔女のところに行ってくると言うのに、なぜかその次の場面はバンクォーの葬儀で、その後に魔女に再び会いに行く場面がある。宴の後に魔女に会いに行くと言っているのに葬式が先なのは日時の進み方としておかしいと思う。あと、マルカムがマクダフの前でウソをついて試すところでは自分の女癖を大げさに吹聴する台詞だけがカットされている。わかりやすくしようと思ったのかもしれないが、むしろ元のテクストをカットしたり変なところでつないで付け足したりしているせいで全体的にもたついた感じになり、動きで引っ張るだけで物語がちょっと軽視されているように感じた。