シンプルでエネルギッシュ~カクシンハン実験公演『ジュリアス・シーザー』(配信)

 カクシンハン実験公演『ジュリアス・シーザー』を見た。若手俳優を中心に、たった14日の稽古でシェイクスピアを…という促成栽培みたいな短期集中の芝居作りによる実験的なプロダクションである。シアター風姿花伝での上演だが、2日間しかなくて直接行けないので配信で見た。

za.theater

 現代の衣装を用いたシンプルなセットでの上演である。相変わらずカクシンハンらしくパイプ椅子が大好きで、舞台の回りに並べられたパイプ椅子に役者たちが座ったり、また暗殺者がシーザーを刺す場面では剣のかわりにパイプ椅子が使われている。シーザーの遺骸はパイプ椅子で表現されるし、最後は戦場で床にパイプ椅子が散らばった状態になる。わりとみんなラフな格好で、キャシアスはニルヴァーナのTシャツを着ているのだが、シーザーだけは赤いちょっとあらたまった感じの服装をしており、独裁者になることを懸念されているくらいはカリスマ的でパブリックイメージに気を遣っている人なのだろうという印象を与えるようになっている。

 全体的には若々しく、とてもシンプルでエネルギッシュな上演である。14日しか稽古がなかったということでちょっとセリフが急ぎすぎだったり滑らかさに欠けるところはあるが、それでも集中的に練習した結果としてのエネルギーが爆発するような活力はある。わりと当たりの柔らかいブルータスと堂々としたアントニーの対比があるのだが、アントニー役の柳本璃音はイヤリングをつけていてとくに男性らしくしようというような小細工はしていないのにしっかりアントニーらしく見えるのが良かった。