未成年者の個人情報をさらしてはいけない~『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(試写、ネタバレ注意)

 『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』を試写で見てきた。

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 公開前なのであまりネタバレしないように書くが、とりあえずMCUになってからのスパイダーマンシリーズを見ていれば一応、わかるように作られているとは思う…ものの、それ以前のスパイダーマンシリーズの映画についても押さえておいたほうがわかりやすいということは間違いない(とくに『アメイジング・スパイダーマン2』を見たほうがいい)。前半はミステリオに個人情報をさらされた結果としてピーター(トム・ホランド)がえらいめにあう様子を描きつつ(未成年者の個人情報をさらすとか、ミステリオは最低なやつである)、ピーター、ネッド(ジェイコブ・バタロン)、MJ(ゼンデイヤ)の大学入試や、メイおばさん(マリサ・トメイ)とハッピー(ジョン・ファヴロー)の別れ話などけっこう家庭的な内容も盛り込まれているのだが(ピーターが2人が付き合うことにとても肯定的で、子どもっぽく嫉妬したりしないのがいい)、亡きトニーの真似をしようとしたのかなんなのか、柄にも無く兄貴ぶったドクター・ストレンジベネディクト・カンバーバッチ)の良かれと思って実は誤った進路アドバイス…的なもののせいで会いたくない親戚が全員遠方から押しかけてきたみたいな事態になり、ピーターの人生はメチャクチャになってしまう。終盤は相当に重い話である。

 いったいこの後どうなるのかとか、冷静に考えるとちょっとつじつまがおかしいところがあるのではとか、ちょっと受け止めきれないくらいショッキングな展開があるとか、いろいろ考えるところがあるのだが、個人的にはピーターの人生をまっさらな状態に戻したいという最初の欲求はとても理解できるものがあった。『デイリー・ビューグル』みたいなゴミメディアにいじめられたらそう思うのは当たり前だと思う。そういう点からすると、最後のピーターの選択はポジティヴなものとしてとらえたほうがいいのかもしれないと思う。MCUのピーターは常に最後に年齢のわりにはあまりにも大変な選択を迫られ、そのたびに非常に成熟した決断を下していて、このシリーズは本当に若者の成長を丁寧に追うというコンセプトが一貫していると思った。

 ただ、内容的にはよくできていると思う一方、終盤のアクションの整理にはちょっと疑問があった。何しろかなり背景が暗い上、砂が飛び散ったり、身の軽いキャラクターがたくさん出てきて跳んだり跳ねたりするなど、アクションが見えづらくなる要素がかなりたくさんある。このためけっこうクライマックスになるところのアクションがわかりづらくなっており、もう少しここは編集で工夫したほうがよかったのではと思った。