正統派のプロダクション~新国立劇場『シンデレラ』

 新国立劇場で『シンデレラ』を見た。フレデリック・アシュトン振付のもので、ウェンディ・エリス・サムスとマリン・ソワーズが監修・演出、マーティン・イェーツ指揮によるものである。

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 全体的には非常に正統派の演出で、安心して見られるが、私の好みからするとちょっとオーソドックスすぎるような気もした。衣装やセットが大変綺麗で、仙女(木村優里)がかぼちゃを投げるとキラキラしたかぼちゃの馬車に乗ったシンデレラ(小野絢子)が出てくるところは目の覚めるような華やかさである。全体的にわりと人間味のある演出で、義理のお姉さんたち(奥村康祐、小野寺雄)はコミカルでそこまで底意地の悪い感じではなく、この2人は母親にスポイルされた単なるわがままで何も考えていないアホの子ちゃんたちなのでは…という感じがした。王子(福岡雄大)とシンデレラの意気もよくあっており、舞踏会の終盤では恋心が盛り上がってくる様子が踊りからよくわかったし、一瞬でシンデレラがもとの粗末な服に戻るところもダイナミックで良かった。

 なお、私がこのバージョンの『シンデレラ』を見ていて一番よくわからないのは、途中で現れるハイパーみかんタイム(と私が呼んでいるだけなのだが)みたいなやつである。王子とシンデレラがお姉さんたちに柑橘類を分けて、お姉さんたちが取り合いをする。前にKバレエで見た時はここがちょっとオリエンタリストな感じであまり面白いと思わず、それに比べるとこのプロダクションはお間抜けでわりと食い意地も張っているのかもしれないお姉さんたちが取り合いをするのを強調していて見やすかった。ただ、ここで出てくる柑橘類がどういう意味なのか、私はまだあんまり理解していない…