なぜこれで面白くなるのかわからないが、大変面白い~男肉 du Soleil『転生したハムレットの世界で生きるべきか死ぬべきか戻れるか、それが問題だ』(ネタバレ)

 下北沢の小劇場B1で男肉 du Soleil『転生したハムレットの世界で生きるべきか死ぬべきか戻れるか、それが問題だ』を見てきた。

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 借金を返すためにいろいろな仕事で過労である一方、迷惑系YouTuberとしても活動している城之内(城之内コゴロー)が事故をきっかけに『ハムレット』の世界に転生してしまい、そこでハムレットの悲劇を止めようとするものの、なかなかうまくいかない…という話である。正直、この展開で面白くなるとは思えないし、こういう系統の台本だと95%くらいは失敗作になるのではないかと思うのだが(シェイクスピアも最近のラノベなどの設定も不消化になって単に寒いだけになりやすい)、これはけっこううまくいっている。異世界設定もわりとうまく機能しているし、『ハムレット』も比較的ちゃんとやっている。途中であだち充を名乗る悲劇に取り憑かれた男が糸を引いていたとわかるところなど、作者に関するメタな視点があってなかなかうまいじゃないかと感心してしまったし(しかし、最近漫画家を名乗る人物が出てくる芝居を見るのは2本目だな…)、最後に団長(池浦さだ夢)が出てくるところはアホっぽいようでちゃんと古典的なデウス・エクス・マキナになっている。相変わらずあるしつこい踊りも、エネルギーにあてられてしまって楽しく見られる。演劇の古典的要素をモダンな設定と組み合わせてきちんと楽しい舞台にしている作品だ。

 ただ、役者の技術はかなりでこぼこしており、台詞や歌詞は相変わらず聞こえないところもけっこうある。劇場がB1なので、これは役者の立ち位置にも関係があるのかもしれない。また、いくつかやりすぎで寒いのではと思えるジョークもあり、ハムレットがずっとしつこく(身振りなので実際に出すわけではないのだが)イチモツぶらぶらごっこみたいなのをしているのはいらんのでは…と思った(原作のハムレットはイチモツを出していないが、それを補ってあまりある狂気ぶりなので、あのへんは原作準拠にしたほうが効果的なのではと思う)。