志は高いが、ちょっと教育番組っぽい~『彼女たちの断片』(配信)

 配信で『彼女たちの断片』を見た。石原燃作、小森明子演出のThe東京演劇アンサンブルによる芝居である。中絶が主題で、オールフィメールの上演である。

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 大学生の多部真紀(仙石貴久江)の思わぬ妊娠と中絶薬による中絶をめぐって、世代や立場の違う複数の女たちが繰り広げる対話を描いた作品である。真紀は同級生の友達みちる(永野愛理)に相談し、みちるが海外から中絶薬を取り寄せることにする。しかしながら2人とも学生でクレジットカードを持っていなかったので、みちるが母親である天野(原口久美子)の仕事仲間である年上の涼(山﨑智子)に相談する。薬を取り寄せるが、真紀は自宅では2回に分けてのんで出血のある中絶薬を使うことができず、涼が天野の共同経営者である晶(洪美玉)に相談する。真紀は晶とその母である葉子(志賀澤子)の家で中絶薬を使うことにする。ところが、葉子の友達のまゆみ(奈須弘子)が訪ねてきて、またみちるの母の天野があやしんで晶の家にやってきたので、女たちは全員で真紀を支援しながら妊娠、中絶について考えることになる。

 最初に主な登場人物が紹介され、設定がわかるようになっている。序盤は真紀が保護者に何も言わずに中絶薬で中絶することに天野が疑問を呈し、それに対していろいろ他の女たちが中絶について現行法での位置づけとか、日本で中絶のあり方が遅れていることとか、フェミニズムとかミソジニーとか、いろいろな話をするという展開である。ここがなんか教育番組みたい…というか、科学などを扱った芝居(『驚愕の谷』とか)にありがちな、お勉強の内容を紹介します、みたいな感じになっているのがあまり良くない。

 一方、終盤はそれぞれの女性たちが個人的な体験を打ち明けあい、それを通して連帯するというような展開になっており、ここはとても良いのではないかと思った。ただ、これについても真紀の家庭環境とかをもうちょっと掘り下げてほしい…というか、序盤で真紀が自宅ではプライバシーが無いので中絶ができないということをかなりさらっと説明しており、このへんの問題をもっと描くと良いのではないかと思った。たぶん構成としては、真紀をダシにして他の人が語る…というよりも、オムニバスみたいな形式にしたほうがまとまりがよくなるのかもしれない。