厭戦の芝居~『岸田國士戦争劇集』(配信)

 DULL-COLORED POPの『岸田國士戦争劇集』を紅組キャストの配信で見た。谷賢一演出で、岸田國士の戦争を題材とする短い戯曲『動員挿話』『戦争指導者』『かへらじと』を続けて上演するものである。ライヴで見に行く予定だったのだが、私の予約回が中止になってしまったので配信で見た。岸田國士の芝居を見たのは初めてである。いずれも厭戦的な気分のある作品である(『戦争指導者』は幕間の漫才みたいな感じで1分くらいしかない)。

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 『動員挿話』は、馬丁の友吉が日露戦争に出征する上司の宇治に一緒に来るよう言われるが、妻の数代に猛烈に反対されるという内容である。なんとなく同調圧力に流されてしまう友吉に比べて数代は夫と一緒にいることを何よりも望んでおり、圧力に強く抵抗する。1927年の作品だそうだが、かなりちゃんとジェンダー問題を扱った芝居だという印象を受けた。役者陣の細かい演技なども良く、とくに宇治の妻が実は数代をうらやましがっているようで、妙に微笑みを浮かべていたりするあたりがリアルで怖い。

 『かへらじと』は、1943年という第二次世界大戦中の作品で、小さい時に親友のさんちゃんを事故で片眼失明に追い込んでしまった志岐が、出征にあたってさんちゃんの分も働くと誓い、結局戦死してしまうという話である。過ちで親友をつらいめにあわせてしまったことをずっと後悔し続ける清廉な青年の話なのだが、一見、そういう清廉さで国に仕える青年を称賛しているようでいて、実際はそういう状況に対する批判もこめられているように見える。こちらも演技などは良かったのだが、おそらく配信のせいで、オフの台詞の音量が不安定でたまに聞こえにくいところがあった。